綺月は
組んでいた長い足をほどき、
揃えると。
背筋を伸ばし。
凛と俺を見つめてきた。
「氷牙。
あの時のお返し、今度は俺にさせろよ」
「お返しって?」
「今ので、わかんねぇのかよ?」
わかんねぇよ。
わかんねぇから……
「綺月、ちゃんと人間語を話せ!」
「話してるっつうの!」
「あぁ~。悪魔に理解求めるのって
こんなムズイのかよ?」と、
波打つ黒髪を、
両手で掻きむしった綺月は。
「だから!
みくるちゃん一人だけの前で、
ゾルックライブをしてやるって言ってんの!」
俺の心に響けとばかりに、
人差し指を俺に突き出してきた。
それって……
客は、みくる一人だけ。
そんな中で、俺がアイドルとして
ステージに立つって言うことだよな?
そんなの無理に決まってるだろ!
ハズすぎて、俺の心が崩壊するわ!



