「優菜、ありがとう。まさか迎えに来てくれてると思わなかったからびっくりした」
「啓太が風邪ひいたら大変でしょ」
「それだけが来た理由なの?」
「ん?」
「俺に会いたくて来てくれたのかと思った。なんだよ、会いたかったのは俺だけなのかよ」
啓太が拗ねたように言った。
「そんなことないよ。会いたかったよ、とっても」
「ねぇ優菜、問題です。俺さ、左手に傘持ってるでしょ?右手にスポーツバッグ持ってるよね。優菜とギュッてしたいときはどうすればいい?」
「うんっと。こうすればいい?」
そう言って私は啓太の背中に両腕を回して啓太をギュッって抱きしめた。
「あーーーっ!優菜、俺もうダメだ。優菜のこと好き過ぎてまた涙が出てくる」
「ふふっ、本当に啓太って感情豊かって言うか、泣き虫だよね」
「誰のせいだと思ってんの」
いつもの啓太だったから、私は「小百合ちゃん」をそっと心の中に封印した。



