昨夜、一年生の斉藤くんの強引な宣言のことを考えていたせいで寝不足だよ。

あの子、どうして私のこと知っていたの?いくら考えても思い出せなくて、なんかスッキリしない。


「行ってきまーす」

まだ眠い目を擦りながら、いつもの時間に家を出て学校へ向かう。


「優菜先輩、おはよう」

ん?誰?

声のした方へ振り向くと、そこには家の門に寄りかかり、腕を組んで立っている斉藤くんがいた。

「斉藤くん、おはよう・・・・。えっ?斉藤くん?」

思わず二度見してしまった。

「そんな驚かないでよ。一緒に学校行こ」

「なんで?なんで私の家を知ってるの?もしかしてストーカー?」

「はぁ?何言ってんの?俺、優菜先輩のこと知ってるって言ったよね」

「私は知らないし。どこかで会ったことがあるの?」

「それは、優菜先輩が頑張って思い出してよ」

「たとえ知り合いだったとしても、どうして家の前にいるわけ?やっぱりストーカーだよね」

「ストーカーじゃないし。今日から毎日迎えに来るから。俺たち付き合ってるんだから」

「いやいや、付き合ってないから!」

「じゃ、ちゃんと申し込むよ。優菜先輩、俺とお付き合いして下さい」

頬をほんのり赤くして、斉藤くんが真剣な顔で告白してきた。

「昨日も言ったけど、知らない人とはお付き合いできません」

一瞬、斉藤くんの目が揺れる。

「分かったよ。じゃあね。俺、先に行くわ」

斉藤くんは肩を落とし、さっきまでの威勢が消えて先に歩き出した。
分かりやすく落ち込んでいる。

学校までは同じ道だよ。今度は私が後ろから斉藤くんをストーカーしてるみたい。

「待って、斉藤くん。学校まで一緒に行くよ。傷つけちゃったなら、ごめんなさい」

私はそう斉藤くんに言いながら、斉藤くんの隣に並んだ。
斉藤くん、悲しい顔してないといいけどな、って思ってそーっと斉藤くんの顔を覗く。

「あははっ、やっぱり優菜先輩は優しいね。全然変わってない」

斉藤くんは堪え切れないように笑い出し、そんなことを言う。

「もう!斉藤くんが急に元気なくなったから心配したのに!」

「やっぱ俺さ、優菜先輩のこと好きだわ。これから俺のこと好きになってもらえるように頑張るから。覚悟しといて」

こんな告白、されたことない。

斉藤くんがストレート過ぎて顔が熱くなる。

「そんな宣言されたら、恥ずかしいよ」

「恥ずかしいと思ってくれたんなら、一歩前進だよね。さっきみたいに、付き合えません!って言わなかったし」

そう話す斉藤くんの顔がとても嬉しそうで、その笑った顔がまだ少し幼さの残っている顔で。

不覚にもドキッとした。これって、母性本能?

前にもこんな気持ちになったことがある。
誰かのことを守ってあげたいって思った。
あれは誰に対してだった?