吐く息が白く、外にいると肌がピリッと凍り付くような晴天の日、私と啓太はお母さんの乗った飛行機が見えなくなっても、その飛行機が消えた空をずっと見上げていた。

泣かないつもりだった。

一生の別れじゃないのに。

それでも涙が止まらなかった。

「ねぇ、私、お母さんの前で上手に笑えていたかな?」

「ん。笑えていたよ。優しい顔をしていたよ」

見ていた空から啓太へ目線を移し、

「帰ろっか、啓太」

「うん、帰ろう。優菜、今日からよろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いします、啓太」


家に帰るとテーブルの上にお母さんからの手紙が置いてあった。


【喧嘩をした次の日の朝は、出掛ける前に必ずキスをして。仲直りの魔法よ】


お母さん・・・。ありがとう。