「豊喜さんの転勤が決まってね。転勤先はシンガポールなの。それで、お母さんに一緒に来て欲しいって」
すると豊喜さんが、
「優菜ちゃんも一緒に来て欲しいと思ってる。僕がシンガポールへ行くのは来月なんだけど、家族は三か月後に来てもらうことになるんだよ。僕の会社で三か月間の海外渡航のための教育を受けてもらわないといけなくてね」
「ちょっと!ちょっと待ってください!優菜も連れて行くの?シンガポールに?」
啓太がたまらず豊喜さんの話を遮る。
私もパッと思いつく疑問を並べた。
「だって、学校は?言語だって違うし、三か月後なんて急すぎるよ。お母さんは?お母さんはシンガポールに行きたいの?旅行じゃないんだよ」
「お母さんは行きたいと思ってるわよ。豊喜さんのサポートしたいしね」
何かを考えこんでいた啓太から意外な言葉が出た。
「優菜のお母さんが幸せになれるなら、一緒にシンガポールへ行った方がいいです。絶対に離れてはだめです。俺の両親はすれ違いから離婚したんで。一緒にいないとダメなんですよ」
「啓太くん、ありがとう。優しいのね」



