試合が終わったから豪くんたちはバスに戻らなければならなくて、

「すぐ啓太も来るだろうから、下で待ってる?それともここにいるのか?あの女たちは下に降りて行ったから、ここにいた方がいいかもな」

「そうだね、ここで待ってるよ。豪くん、北高校のみんな、どうもありがとうございました。明日の決勝戦、頑張って下さいね」

「優菜さん、明日は来ないの?俺たち寂しいよ」

「遠くからみんなが優勝するように祈ってるから。豪くんも、頑張ってね」

「サンキュ!じゃな、優菜。またそのうちな!お前ら、バスに戻るぞ」

豪くんたちが帰って、静かになる2階席。

1階から誰かが上がってくる足音がしたから啓太かと思って振り返ったら、さっきまでここにいた女の子たち数人で。

「ね、そこの人。Keiと馴れ馴れしくしてたけど、なんなの?」

もしかして私に話し掛けてる? なら返事するしかないよね。

「はい?私ですか?」

「そうよ。私たちはKeiの友達の友達なの。さっきも下でKeiと話してきたのよ」

「えっと、私は・・・。っていうか、そもそもKeiって言ったって素人が雑誌に載っただけでしょ?そこまで騒ぐのおかしくないですか?」

「やだ、Keiはモデルになるわよ。あんなルックスと身長があれば雑誌の人が放っておかないから。私たちはファン第一号なんだから」

うーん。啓太はモデルになるの?なっちゃうの?

やっぱり私が浅はかだったんだよね。

撮影会場に行ったらそこで啓太がスカウトされちゃうかな。

行かない方がいいかな。でも、有名人がいるかも知れないしな。

私は目の前の女の子たちのことなんか無視して、自分の世界に入っていた。

「ちょっと、黙ってないで何とか言ったらどうなのよ!」

「はい?何か言いましたっけ?」

「はぁ?なにこの女」

そんな険悪なムードになっている私たちのところへ啓太が現れた。