「優菜、こっち向いて。優菜の顔見せて」
そう言うと啓太は私の顎に指を添えて、私の顔を啓太の方へ向かせた。
その時の啓太の顔がやけに大人っぽくて、色っぽくて。
私は啓太のその雰囲気に飲み込まれた。
「啓太はずるい」
「俺の何がずるいの?」
「啓太は子供になったり、急に大人びたり。甘えてきたりするのに私のことリードしたりもする。そんなのずるい」
「時には優菜に甘えたいって思うけど、一番は優菜を守りたいって思ってるんだよ。だから優菜も遠慮しないで俺にたくさん甘えてよ」
「啓太、ありがと・・・んっ」
啓太が首を少し傾けて私の口をキスで塞いだ。
その瞬間、外から落雷の凄い音がして部屋が揺れ、家中の電気が消えた。
「キャッ!」
私は雷が大嫌い。音を聞くのも光を見るのも。
「いやー!啓太、怖い」
思わず啓太にしがみついた。
すると啓太から
「痛ってー!」
あれ?私の口の中で鉄の味がする?違う、これ血の味だ。
「えっ?啓太?もしかして・・・」
「優菜ぁ、俺の唇噛んだだろ。痛いよぉ」
「ごごご、ごめんなさい!雷が怖くて、つい力が入ってしまって」
「暗くて何も見えねー。優菜携帯ある?」
「多分、カバンの中。やだよ、怖くてカバン取りに行けないよ」
「じゃ、俺の携帯取ってくるから、待ってて」
「無理無理無理!一緒に行くから。私から離れないで」
「優菜、そんなにしがみついてたら歩けないって」
外ではまだ雷が鳴り響いていて。窓から稲光が入ってくるたびに目を瞑り、その場にしゃがんで耳を押さえた。
「啓太、早く携帯取ってきて。取ったらすぐに戻ってきて!」
啓太は暗い部屋の中、手探りで自分の携帯を見つけると、ライト機能を付けて、私の元へ帰ってきた。



