「……『聖域』は、奪われたのでしょうか」
私の呟きのような問いに、銀太さんは「さぁ?」と、首を傾げる。
「当主、聖威の父親が『聖域』を持っていたのかもわからないし、そもそも『聖域』を奪うことが出来るのかもわからない。この『聖域』とやらは秘匿されていて、当主になる権利を持つ者代々にのみ、その知識が受け継がれているらしい。だから、わからない」
「そうですか……」
「だが、俺たちが架威を追うひとつの事実として『架威の手によって、星宿院家が滅んだ』ただそれだけだ。貴族殲滅は特級犯罪、極刑に値する」
「……」
「……あと、ここに来て発覚した事実とは『架威はまだ聖域を狙っている』ということ。ではあるが」
だから、聖威は貴族のお姫様にも関わらず、従者の翼を連れてこの大防衛軍に入ったのだという。
自らの手で、一族、親の仇を捕まえるために。
……しかし、聖威は想像以上にお勉強が出来て、戦士としても一流だったがために、どんどん昇進してルナドラグ最年少の上官となってしまったのは誤算ともいえる。