その会話を最後に、石板に映っていた男性の顔がプツンと消えた。

途端に「疲れるわ……」と、銀太さんはボヤいて頭をガシガシと掻いている。

そして、席から立つと同時に、パチッと目が合ってしまった。



「お、舞空。起きたのか。早いな?」

「あっ、は、はい」



私に気付いた銀太さんは、驚く様子もなく至って普通の対応だった。



「ひょっとして、ずっとそこにいた?気付かなくて悪いな」

「い、いえっ!」

「本部への定期報告中だったんだ。……何か飲む?」

「は、はい。すみません…」



そう言って、銀太さんは台所へと移動する。その定期報告を黙って見ていたにも関わらず、嫌な態度を取ることもなく。

また、お湯を沸かしていた。

「銀太さんも朝早いんですね」

「月輪界とこっちじゃ少々時差があるらしい。だからしょうがなく今の時間。……兄上、早寝だから」

「お兄様……」

「ああ。一番上の兄、大防衛軍の総統だ」

「総統!」



それから、沸いたお湯で銀太さんは紅茶を淹れてくれた。

香りも良くて飲んだことのない味だったが、すごく美味しかった。