これは、どんなカラクリなのだろう。

離れたところからまじまじと凝視して、観察する。

私の訝しげな視線にも気付かず、銀太さんは石板に映る男性と話を続けているが。



『私は姫様が異世界で大変不自由していないか心配をしているんだ!食事が口に合わなくてひもじい思いしていないか?異世界の水で腹をくだしていないか?着る物がダサくてしょんぼりしていないか!』

「兄上、心配しすぎだろ。聖威はそんなタマじゃない。ひもじい思いさせないためにも、そっちから食料転送してもらって俺がメシを作ることにしたろ。着る物は確かに機能的じゃないが、兄上までこの世界をディスると国際問題に発展するぞ」

『言っておくが、銀太。私は天界をディスっているわけではない。ただ姫様が心配なだけなのだ。まさか、特級犯罪人・架威を自らの手で捕まえようと、月輪界を離れるだなんて……』

「俺と翼がついてるから心配ないって」

『……おまえらだから余計心配なんだ!そもそも、帝宮の潜入中に男に誑かされた?!おまえらがついていながら何をやってるんだ!姫様は、月輪界貴族星宿院家のたった一人の生き残り、我が月輪界のたった一人の神術士なんだぞ?!』