自分の境遇そのものをネタに挙げられていると、瞬時に理解した。
その途端、一気に恥ずかしくなってカッとなってしまった。
「な、何よそれ!」
「おまえの言い分より、愛するパパさんの言い分を信じて他のオンナに乗り換えたおまえの婚約者殿を、ざまあするのだっ!そのパパがニセモノだとも知らずに、お利口さんにパパに従った調子こきヤローになぁ?フッフッ……」
「あ、朝霧様に?!ふ、復讐するわけないでしょ!」
何を言ってるの、この娘は!
例え、冤罪で理不尽に婚約破棄されたからって……復讐なんて微塵も考えたことないし、それに、身分高い天部衆の一族に歯向かうなんて、不敬でしょうが!
っていうか、韋駄天様が囚われてるかもしれない危機的状況で、朝霧様に『ざまあ』という名の復讐?してる場合じゃないでしょ!
しかし、聖威はニヤニヤ顔のまま「えー?」と首を傾げる。その顔貌、もはや小悪魔にしか見えない。
「じゃあ、何?泣き寝入り?舞空おまえ、悔しくないの?身分低いだの下賤だの言われて、信じてたのにバカにされて」
「それはっ……」
核心を突かれて、言葉を飲み込んでしまう。
そりゃあ……信じていた人に、散々罵倒されて悔しくないわけがないけど。



