実は……そんな韋駄天様が、何の調査もなく私が毒殺犯だと一方的に決めつけたこと自体、違和感は違和感であったのだけど。



想像を遥かに超えた事実に、動揺を誘われる。

まさか、あの正義感が強い韋駄天様が、令嬢誘拐?罪を犯すだなんて、嘘っ……信じられない!

あまりの衝撃に眩暈がする。

フラッと倒れかけていたところを「大丈夫か」と、銀太さんが後ろから支えてくれた。

「す、すみません」

「取り敢えず、座れ」

後ろから両肩を支えられたまま、私はそこにある椅子に座らされる。

大きな食卓を挟んで、向かいには綺麗な顔立ちをした聖威の顔が。

韋駄天様の隠れた所業に激しく動揺している私を、真剣な面持ちで見つめてくる。



「舞空、落ち着け。……私の見解、話してもいいか?」



凛とした、黒目がちな瞳に吸い込まれそうになる。漆黒の夜空のような瞳に。

すると、不思議と胸の奥が落ち着いてくるのがわかる。

呼吸も平静に整った後に、静かに頷いた。



「聖威の見解?……それは俺も聞きたい」

「今の舞空お嬢さんの話を受けて、ってことだよなぁ?」

「ああ」