桃色混じりの金髪に、日焼けのない陶磁器のような白い肌。細い手。

一重瞼で、さほど大きくはないが、美しい色合いの蒼玉の瞳。細い眉。

暗がりで見かけたのに、月明かりに照らされて顔ははっきりと覚えていた。



「間違いありません……この令嬢です」



韋駄天様が寝所に連れ込んでいた令嬢は、間違いない。この令嬢だ。



「この令嬢は……迦楼羅族の縁戚貴族の令嬢だ。星見候補として善見城に滞在していた」

「ひょっとして……」

「ああ。五日ほど前に消息を絶っている」

「っ!」



やはり……この姿絵の令嬢たちは。

行方不明になったという、星見候補の令嬢たちだったのだ。

まさか、あの噂話がこんなにも事件性があるものだとは思ってもみない。

でも、何で、行方不明になった令嬢と韋駄天様が一緒に……?!



「もう、真っ黒クロ助じゃんかよ!それ!」

「で、でもっ、韋駄天様が、まさかっ……!」

「まあ、その場で声高らかに犯人を即決した時点で、濃厚クロだわな」



私に一方的に冤罪を告げ、私を切り捨てた韋駄天様であるが。

本来は、とても人当たりが良くて、正義感が強く、情熱的な優しい御方。

……まさか、奥様の知らないところで令嬢遊びはおろか令嬢を拐かすなんて。

私の知っている韋駄天様では考えられないことだ。