そこにいたのは、ここの城主・韋駄天様。

しかも、その城主に腕を絡ませ、親密そうに傍を歩いているのは……見知らぬ女性?

伽藍様と同じ歳のほどの若い女性だ。もちろん奥様ではない。

護衛も付けずに、若い女性と体を寄せて親密そうな様子の二人。

遠くからその様子を見守っていると、二人は傍の一室へと姿を消した。……そこは、客人用の寝所だ。

まさに城主の不貞の現場を目撃してしまったという衝撃に、心臓がバクバクと煩かったのは言うまでもなかった。



最近、城への戻りが遅いとは思っていたけど、まさか入れ込んでいる女性がいたとは。

けれども、わざわざ城まで連れてくる?情宿で会えばいいのに。

離縁秒読みなのかしら……。



……という『違和感』なら、あった。




「……韋駄天様は側妃を娶らず正妃の奥様一筋だと思っていましたから、まさか外で愛妾を作るだなんてと思っていました。……いえ、一夜の関係かもしれませんが」

「……」

「……え、あの」



自分が抱えていた秘密を暴露するのに精一杯で、気が付かなかった。

私の話を聞いていた竜樹様と三人の表情は、いつの間にかガラリと変わっていたのだった。