一人の世界で考え事を始めてしまった彼に対して、外野の二人、聖威と翼は言いたいことを言っているが……不敬!不敬ですよ!



「……ああっ、思い出した!……舞空嬢、君の言う『老師』とは【天台天導師】那金陀(なきんだ)様のことだね?那金陀様の指導なら納得だ」

「は、はぁ……」

私の名前を存じていたことにも驚いたが、老師の素性をすぐに察したことにも驚いた。

老師が天導師?……そうだったの?!

神術に優れたただのおじいちゃんじゃなかったのか。



「で、竜樹。スッキリしたところで、話を進めてくれ。そこの舞空お嬢さん、ドン引きしてるから。何の事情もわからないのに、私達に攫われてさ」



そう切り出したのは、聖威だった。

いつの間にか椅子に腰掛けていて、用意してもらったお茶を飲んでいる。

……というか、翼の言っていたボスとは。竜樹様のことなの?!



「ああ、そうだった」と、竜樹様は気を取り直して、こほんと咳払いをした。

そして、改めて私の方へと向き直る。