婚約の妨げも、何も。天王様と水蘭様はそのような関係ではなかったのだ。

この世界の未来について、熱く語り合う友人のようなもの。そこに恋心は介在していなかった。

それに……水蘭様には、他に想い慕っている殿方がいた。

その胸の内を毎回聞いてあげては、水蘭様の想いが成就するよう協力していたとか、何とか。



『やはり、僕たちは話し合いがもう少し必要だったみたいだね……』



そう呟く天王様の表情は、どこか寂しそうだった。



……とは言え、聖威が月輪界へ戻る前日の夜に、二人は話し合う機会があったのだ。

天王様は、胸の内を全て聖威に伝えたのだが……聖威からの返答は『私らはお互い住む世界が違うんだ』の一点張りで、ちゃんとした返事は貰えてなかったという。

聖威の本音はどうなのか。そこはあやふやにされたままだった。

そして、はっきりしないまま、聖威は自分の世界に帰っていった。



『お互い、住む世界が違うんだ』



……そう言われたら、元も子もないじゃない。

そうじゃなくて、大切なのはお互いの素直な、正直な想いなのに。