ダメだ。こうともなると、私が『許します』というまで、韋駄天城に戻ると言うまで、何度でも謝り倒しにくるだろう。

許すも何も、韋駄天様はおもいっきり被害者なのだ。架威に襲撃された、被害者。

私への加害者は韋駄天様の周りの人物であって、韋駄天様本人ではない。

……の、だけど。『自分が襲撃されたばかりに』という理由が第一なんだろう。この人の脳内は。



でも……何歩か譲って謝罪は受け入れても。

城に戻ることは、もう出来ない。



だが、そんな私の心情を知る由もなく、韋駄天様は土下座の体勢のまま私に許しを乞う。



「あのアホ愚息には、誠心誠意謝らせる!頭が地に減り込むぐらい下げさせるから!頼む、どうか戻ってきてくれぇぇ!それに、あのアホにはしっかり者の舞空がいないと将来不安なんだぁぁ!」

「……」

「あの婚約破棄はもちろん白紙だ!済まなかったぁぁっ!」



随分、自分の息子を罵るものですね。

しかし、困った。婚約破棄を白紙?

韋駄天様には申し訳ないが……私は朝霧様とはもう復縁する気はない。