そうして、オムライスを食べ終えた私たちは、給仕にお茶と私の持ち込んだチョコレートを用意して貰う。

二人のささやかな時間の続きを楽しんでいた。

……その時だった。




「……舞空ぅぅぅぅっ!!」



遠くから微かに聞こえる、自分の名を呼ぶ野太い声に、思わず肩をビクッと震わせた。

口に運んでいた紅茶の茶碗をガクッと止めてしまうほど。



まさか、この声は……!



「舞空ぅぅぅぅ!!済まなかったぁぁぁっ!!」



聞き覚えが大アリなこの声色に、ギョッとさせられる。

まさか、昨日に引き続き、本日は天子様とのお茶会にまで乱入してこようとするとは!

らしいというか、何というか。



声と足音が段々と近付いてくるのを察して、途端に席を立つ。

振り向けばそこにはもう、標的がいて。

少し手前から飛び込んできて、平伏しながらザザッ!と滑り込んで、私の前に現れたのである。

豹牙様が「おおっ!スライディング土下座!」と、感心した声をあげた。

……いや、感心してる場合じゃないですよ!



突如として滑り込んで現れ(スライディング土下座っていうんだ……)、なお頭が地につくほど下げ続けている。

両手を付いているその姿を見下ろして、深いため息が出てきた。



「頭を下げるなんて、いい加減おやめ下さい!……韋駄天様っ!!」