「坊ちゃん坊ちゃん、泣かない泣かない。拙者も別れは辛いのであります!」

「ううぅぅ、できるなら俺も翼に着いていきたいよぉぉ。でも、父上も母上も兄上もダメだって言うんだぁぁ」

「そりゃそうよ。坊ちゃんはみんなに愛されてるからなぁ」

「でも、もう会えないのはいやだ、いやだぁぁ!」

涙をこぼしてしまってもなお、必死に堪えようと、豹牙様は隠すように腕で目を抑える。

翼はそんな豹牙様を宥めて、背中をずっと摩り続けていた。



「でも、坊ちゃん?坊ちゃんの『夢』って何だっけ?」

「ゆめ……」



何かに気付かされたかのように、豹牙様はふと顔を上げる。

翼はニッコリと笑った。



「坊ちゃん、前に教えてくれたでしょ。『俺の夢は、強くてイカした立派な神族になって、近い将来、天帝となった兄上を支える側近になる!』ってね?」

「……うん」



天帝となったお兄様を支える、立派な神族。

……齢10歳の御子が、こんなしっかりした夢を持つなんて。

聞かされているこっちは、感動で胸が熱くてキュンとなった。

言われている対象のお兄様、天王様もきっと感動してるに違いない。