そう言って、聖威はゆっくりと手を翳した。

目の前に現れた【宿曜】の証、星宿権杖に掌を向ける。



「今から……兄上の大好きな『聖域』に行かせてあげましょう?」

「な……」

「今から『聖域』の扉を少しだけ開きます。貴方を『聖域』に閉じ込めて、月輪界へと連れて行く。それが、私が考えた兄上を捕らえる方法……ですが」



聖威の言っていることをいち早く理解したのか、架威はハッとした顔をする。



「【聖域】は魔族にとっては地獄。踏み入ったら最後、【聖域】の空気に触れただけで、即座に封印もしくは消滅する。……魔族を喰らい、内臓や細胞まで魔力で侵された状態の貴方が、『聖域』でどれくらい命を保っていられるでしょうか……?」

「聖威、貴様……!」

「……これが、私の貴方に対する覚悟です!……兄上ぇぇ!」



聖威の翳す右の掌に、金の色を付けた神力が急速に集まる。

ひとつの塊となり、ギュッと凝縮されては、圧を放った。

「聖に祝福されし、月詠の鍵を引く……」

言霊に反応して、金の神力が星宿権杖にも伝っては移り、神々しく輝いては同じく圧が波打って、ピリッと空気に伝わる。




「……【三宝荒神】!」