架威は……理解出来ないのではない。

信じたくないのだ。

自分ではなく、聖威が……眼中にもなかった実の妹が、自分を差し置いて【宿曜】に選ばれたという、事実を。



それは、聖威もわかっているはず。

なのに、残酷な事実を突き付けて、強気に攻める姿勢を崩さないのは。

もう、覚悟を決めたのだろう。



欲望のまま、ここまで好き放題に暴れられて、他世界を巻き込み、何の関係もない多くの令嬢の命を奪った……特級犯罪人を、実の兄を。

もう、庇うことが出来ない。救えない。赦されない。

だから、自らの手で始末をつける覚悟をしたのだ。



《聖威は、あんたにトドメを刺すことが恐らく出来ないだろうな》



……翼の言っていたことは、本当だと思う。

しかし、そんな甘いことを言っていられる事態じゃない。看過できない。

だから、そんな気持ちを心の奥に押し込めるために、『敢えての覚悟』が必要だった。



聖威は決断したのだ。

……だから、【宿曜】であることを、自ら明かしたのでは?と、私は推測する。




「……兄上。決着は私の手でつけさせてもらいます」