二人の間に何があったか、話でしか聞いてないから、本当のところはわからない。

でも、この優しい瞳と口調。

天王様が聖威を求めていたのは、確かだと思った。

そりゃあ、あんな剣幕で追いかけてくるし。



「で、君は下がっていた方がいいと思う。ここは既にとんでもない戦の場になってるから」

「……あ、あっ!」



しかし、そう告げられた時、天王様の背後には四つ足の鋭い牙を持つ魔獣が、今まさに襲い掛かろうとしている時だった。

思わず声をあげてしまう。

だが、背後の気配に気付いていたのか、天王様は直ぐ様振り返るなり、手にしていた剣を大きく振り回した。

一太刀浴びた魔獣は、耳障りな悲鳴をあげている。

その隙に、もう一太刀。振りかぶって、勢いよく縦に斬り込んだ。

さすが、剣の腕もお見事だ。



「大丈夫。ここには近付かせないようにするから!」



そう言って、天王様は一歩前に踏み込んで、魔獣の渦へと身を投じる。

次々と襲い掛かってくる魔獣に、刃を突き立てていた。