何故、二人しかいないこの空間で、架威が自分の行いを暴露し始めているのかはわからない。
ただ、余裕を持っている様子に、とても嫌な予感はした。
「あの韋駄天とかいう男を狙ったことに、特に意味はない。そこに居たから。ただそれだけの理由だ」
「なっ……」
「星見の女どもに効率よく近付くには、『この城に出入りをしている権力ある者』の姿になる必要があった。権力者でないと、女どものいる宮には出入り出来なかったものでね?」
「は……」
そこに居たから?意味はない?
ただそれだけの理由で、伽藍様も私もこんな目に遭ったというの……?
それは、ただこの男に振り回されて被害を被っただけ、とも言える。
この男の欲のために……と、憤りで唇を噛むも、架威は話を続けていた。
「この韋駄天という男は相当顔が知れてる者らしいね?女らを一人ずつ誘い出すのも容易だった。星見という聖なる清き身分を得ようとする立場の割には、女らは尻尾を振ってホイホイ着いてきたよ」
「……」
「……非常にくだらない、穢らわしい。星見という尊き立場を何だと思っているんだ」