その背後には……黒い刀身の剣を振り降ろした翼がいる。
天子様を狙う魔獣を背後から大きく一刀両断したのだった。
背中を深く斬られた魔獣は、途端に粉々になって跡形もなく消え去った。
「翼っ!」
「ふぃーっ、危機一髪……坊っちゃん、何してるんすか!ここは魔族だらけですぞ、早く……」
「いやだ!だって、せっかく翼見つけたのに!離れたらまたいなくなるだろ!いやだ、いやだ!おまえは俺の侍従だぞ!一緒にいるんだー!」
そう言って、毘沙門天様の手を隙を見て振り払った天子様は、目の前に現れた翼の片足にギュッとしがみつく。
もう離れないぞ!と言わんばかりに、しっかり掴んで顔を埋めていた。
見下ろす翼の顔はキョトンとしている。
まさか自分が探されていたとか、こんなにも縋られるとは思ってもみなかったのだろう。
「弱ったなぁ……坊っちゃん」
しかし、苦笑いを浮かべてため息をつくも、その横顔はまんざらでもなさそうだ。
天子様の頭に手を乗せて、くしゃくしゃと撫でる。



