天子様が呼び掛けた方向とは、黒い翼を背中に背負っている、翼だ。
元・侍従であった男が、あれだけ派手に登場したのだ。天子様もわからない訳がない。
もちろん、こんなに派手に騒いで自分の名前を叫んで、階下で魔族と対峙中の翼も気付かないわけがない。
「ぼ、坊っちゃん……!」
「た、翼!……おまえ、どこに行ってたんだよ!なんで急にいなくなっちゃうんだよぉ!ずっと探してたんだよぉ!……剣術大会優勝したら、翼を呼び戻すよう父上にお願いしてくれるって兄上と約束したんだよぉぉ!おまえを追い出したこの毘沙門天にはビンタしといたから、戻ってきてくれよぉぉ!」
自分のありのままの思いを叫んで、全力でぶちまけていた天子様だが、上空から忍び寄る飛行型の魔獣の存在に気付いたのは、その後だった。
「ーーて、天子様っ!」
蝙蝠のような飛行型の魔獣は、天子様目掛けて急降下して突進していく。
毘沙門天様がその場で抱き抱えるように天子様を庇った。
まさに衝突寸前。ところがそこで突然、魔獣が耳障りな悲鳴をあげながらバタバタともがくように暴れ出す。まるで、痛みに悶えるような。



