あれは……!
「……いけません、天子様!魔族ですぞ!早くここから退避を!」
「いやだ!いーやーだぁぁ!俺はここに残るんだ、離せ!はーなーせぇぇ!」
「天子様ぁぁ!大人しくして下さいぃぃ!」
大部分の観衆が逃げたにも関わらず、二階の観覧席でぎゃいのぎゃいのと揉み合っているのは、高位神族のお二人。
天子・豹牙様と、そのお目付役である将軍・毘沙門天様だ。
天子様の体を抱えて逃げようとする毘沙門天様だが、一方の天子様は観覧席の手すりを両手で握っていて、頑として離さない様子。引っ張り合いになっている。
……というか!
こんな魔獣うじゃうじゃした場所から逃げないなんて、何してるんですか!
竜樹様もこの光景を見て「あのワガママ天子っ……!」と舌打ちしている。
「父上も母上も逃げてないじゃんか!何で俺だけ逃げなくちゃいけないんだよぉー!いやだ!いやだ!」
「貴殿の両親は只者じゃありませんから、放置しておいていいんですっ!……何故ですか天子様ぁぁ!」
「だって、翼がいるんだよぉ!ずっと探してたのに、いるんだよ!今逃げたら、もう会えないかもしれないだろぉぉ!……おい、翼!たすくぅぅー!!」



