竜樹様が、あざとい笑みを見せながら、この流れですでにニセモノ認定された韋駄天様、架威の方へ、一歩前に出る。

自らが放つ圧のみで、無言で糾弾するかのように。



一方、架威は憎悪の表情を向けたままだ。眉間にシワを寄せ、目を釣り上げ。

視線の先は翼を見てるのか、抗った私を見てるのか。それとも、無言の圧で糾弾してくる竜樹様か。



「でも、もう一度お聞きします……貴殿」



私達の間の空気が……緊張で張り詰める。



「……貴殿は一体誰ですか?」



あんなに騒いでいた傍聴観衆も、この時だけは一斉に静まった。



「……」



固唾を飲んで、その返答を今かと見守る。

誰もの注目も浴びた、その答えとは。



「……茶番劇と、言ったな……?」



声色が、違う。先程までの韋駄天様と同じ野太い声ではなく、男性の細く高めの声。



「最初から、私はおまえらの掌の上にいたというのか……!」



体からブシュッと噴き出しては纏う、黒い靄。

肌がゾワッと何かが掠める。これは……魔力、障気?!



その返答には翼も鼻で笑う。



「あまりにも『宿曜』に必死で気付かなかったかぁ?……架威様?」

「……ふざけるな!!」