……と、これで終わりではないのが、あの韋駄天様だ。



「……くぉらぁぁっ!朝霧ぃぃぃっ!この愚息がぁぁぁっ!!」



三度、体がビクッと震える。

私への謝罪はあんなに弱々しかったのに、腹の底から飛び出た息子への怒号は、この大広間中の壁を震わせた。



「ひっ!ち、父上!……の、偽物?あれ、本物?」

「たわけ!この儂が本物だぁぁぁ!ニセモノに騙されて婚約者を陥れるとわぁぁぁ!……いつも儂に従ってないで、物事の判断は自分自身でしろといつも言っておるだろうがぁぁっ!この阿呆がぁぁぁ!」

「その絶叫ぶり、やはり貴方が本物の父上か……!」

「何をくだらないことを抜かす!未来を誓い合った婚約者を裏切るとは、その根性叩き直し………」

そう言いかけて、韋駄天様は事切れたようにガクッと脱力する。

「い、韋駄天様!」

「あちゃー。おっさん、このポーションは回復しても全快とまではいかないんだぜぃ?今の怒号でライフを使い切ってもうた」

「なっ!何を呑気なことを言ってる!……韋駄天様、韋駄天様ぁっ!」

「韋駄天様!……衛兵!神殿に連絡しろ!治療が必要だ!神殿に連れてく!」