……その時、一瞬ではあるが。
韋駄天様に成りすました架威の顔が、僅かに歪んだような気がする。
「遅効性の毒物でしたら、より刺激が少ないため口腔内や咽喉を傷付けずに済むでしょうが、それだと症状が一致しません。もしや、新手の薬物か?とも想定しましたが。……ですが、そこで私が見たものとは、伽藍姫の身体に『あるわけのない異変』で御座いました」
そして「こちらをご覧下さい」と弥勒様が指を鳴らすと、そこから小さな術陣が展開される。
術陣から、白い靄と共に姿を現したのは、ひとつの映像だった。
……これ、【投影術式】だ。
神力の分子の流れを利用して、その場の光景を映像に収め、記憶することが出来る。
法院の調査官なら皆習得している難易度そこそこの術式であるが、まさか治癒師の弥勒様も無詠唱でこれを使えるとは。さすが神殿の治癒師様。尊敬。
だが、その【投影術式】が映し出した映像が現れた途端、どよめきの音量が更に強くなった。
それを目にした私も、もちろん驚いた。