「……」



うんともすんとも答えない、韋駄天様の姿をした架威。表情が『無』だ。焦ってるとも、怒ってるともとれない表情。何を考えてるのかがわからない。

でも、もし韋駄天様なら、彼のことはご存知のはず。



彼、弥勒様は神殿勤務の治癒師の中でも、優秀な腕を持つと、有名な治癒師。

私と同じく、光治癒を得意としている御方。……もし、私が神術士になったら、彼のもとで修行を積めればな?なんて、妄想したりもした。

……なるほど。弥勒様が伽藍様の治療に当たったのか。

善見城の神術士団に身を置いている竜樹様と親交があるのも頷ける。

彼が……私が冤罪であることを、皆に気付かせてくれた人。

感謝せねば。後でお礼でも……なんて。



「その伽藍姫の治療に当たった際、いくつか気付いた点が弥勒殿にはあるようです。……さあ、弥勒殿どうぞ」



竜樹様に誘われて、弥勒様は頷いたのち、前に出た。法院裁判官と私らの間の位置にある専用の席に立つ。

「善見城内神殿の弥勒と申します」と、頭を下げてから、弥勒様は話を始めた。