韋駄天様に成りすました架威のめちゃくちゃな発言に、その姿を視界に捉えていた竜樹様は目を細める。

そして、怒涛の反論が始まるのだった。



「ここにいる舞空嬢の『危険人物』なるその根拠を教えて頂きたいものですね?神術士の登録もない、一介の侍女である女性が危険人物となる、その根拠を」

「それは、花街の薬師のところに出入りを……」

「出入りをしただけで、そこで毒を購入したという証拠はあるのですか?確かに薬師は毒の販売をしているでしょう。しかし、舞空嬢は単に香油を購入しに行っただけかもしれない。……何なら、その花街の薬師とやらをここにお呼びして、証言して貰いましょうか?」

「……」

「そもそも、その毒の小瓶は舞空嬢の居室にあったというだけで、舞空嬢の私物でしょうか?ちゃんとお調べになりましたか?」

「……」

怒涛の質問攻めに、韋駄天様もとい架威は、何も言い返さず黙っている。

いや、架威だけではない。この会場内にいる誰もが言葉を失っていた。



そりゃ、冤罪ですから。

言ってること、全部付け焼き刃の捏造ですから。詰めが甘いゆえに、そこを突かれた時の返答を用意してるわけでもないのだ。

何も言い返せるわけがない。