(……やっぱり)



《兄上は狡猾な知能犯だが、頭脳戦は得意じゃない》



架威は、成りすませているようで、成りすませてないのだ。

そして、付け焼き刃のような薄っぺらい、お粗末なでっち上げ。詰めが甘いとも言うべきか。聖威が言う『頭脳戦が得意じゃない』という意味がわかったような気がする。

もし、私ならもっとマシな嘘をつく。現実味を帯びた、真実により近い嘘を。

だって、私が危険人物だなんて、現実味がないでしょう。

嘘をつくために、私という人物のことを知ろうともしてない結果だ。対話が苦手という人によくありがちな様式である。

ましてや論争が苦手だという。……徹底的に糾弾すれば、にっちもさっちも行かなくなるということだろうか。

……だとしたら、これはもう時間の問題かもしれない。

茶番劇……なるほど。



もちろん、弁が立つ竜樹様もそこを聞き流すワケがない。

私よりいち早く、特級犯罪人・架威という者の人となりを大体把握したと思われる、竜樹様が。

……恐らく、架威にとっては、この御方はこの上ない強敵となるだろう。



「……ほう、舞空嬢が危険人物と?」