だが、私は萎縮することなく、演壇までの花道を堂々と歩いた。

だって、私はやっていない。

そう開き直ってしまったからか。



辺りをチラッと見回すと、二階の傍聴席には、先程鉢合わせた天帝様の姿があった。

隣には、天妃の舎脂様。

その御子である、天王様と天子・豹牙様。豹牙様のお目付役である、毘沙門天様も。

天帝の御家族だけではなく、幼少期にお世話になった増長天様などの四天王将軍、他にも天部衆や天竜八部衆の名だたる有名な高位神族の方々の姿も見受けられる。

本当に、想像以上に注目された裁判なのだ、これは。



そして、法院の審判官を目の前に、指定された申し立て人の席に竜樹様と並ぶ。

すると、向かいあった被告人の席から罵声が飛んできた。



「……舞空!護送車から脱走した挙句、父上に異議申し立てとは……この恩知らずめ!」

「……」



私の元婚約者、朝霧様だ。被告人席のちょうど後ろの席にいる。

怒り丸出し、憎悪の表情をおもいっきり私の方に向けていた。



……だが。それよりも、その前には。

私たちが標的としている、敵。

韋駄天様の姿をした、特級犯罪人・架威が、薄ら笑いを浮かべてこっちを見ていた。



さあ、戦いの幕開けだ。