聞いたことのない言葉に首を傾げながら、二人の会話を黙って聞いていた。
するとそこで、幌馬車の方からドカン!バタン!と、一層大きな荒々しい音が響く。
物音に反応するように、黒い翼の彼は「おっ」と声をあげた。
「そろそろじゃね?」
にひひ…と、一層顔を悪そうに歪める彼。
……その時、私は目も疑うような光景を目にするのである。
「うわぁぁ!」という叫び声と共に、幌馬車から人がぽーんと投げ出された。
まるで、放られる鞠のように、軽々しく。
一人、二人……先程まで、私と監獄への道を共にしていた監視兵と御者の姿だったりする。
宙に投げ出された二人は、そこらにゴロゴロと悲しく転がっていた。
それを追うように、先程のローブ姿の少女も飛び出してくる。
その様子を確認してからなのか、私を腕に抱く黒い翼の彼が一声上げた。
「銀ちゃぁぁん!今やでぇ!」
「ほいほい」
呑気な返答をする木の麓の彼。ゆっくりと右腕を前に差し出している。
そこで私は、またしても信じられない光景を目にするのだった。
「…… On your mark, 」



