「申し立て人とその代理人、中へ!」



ギィィィ……と、ゆっくり開かれた扉の向こうからは、まずザワザワとした人の騒めきがあちらこちらから聞こえてきた。

余程、多くの人々がいるに違いない。そう思わせるほどの声の数だ。

もちろん、視覚にもその光景が映る。

大広間の中には、人。人、人だらけ。二階部分の観客席にもびっしりと、人。

こんなにも傍聴者がいるとは、想像以上だった。



……だが、圧倒されて怯んでいる場合ではない。

今一度気合いを入れて、堂々と。着ている臙脂色のワンピースの裾を揺らして、前に進む。

聖威オススメの赤いドレスは、もちろん着ていない。……そんな派手なドレス、法廷っていう厳粛な場所にそぐわない。

だから、もちろん地味な色のモノを。

聖威は「ええぇぇ!」とガッカリしていたが。……頭おかしくなったと思われるでしょ!



法院の審判官らが待ち構える演壇まで、ただ真っ直ぐに進む中で、ヒソヒソと心無い言葉も聞こえてくる。

『一介の侍女が韋駄天様に異議申し立てなど!』という否定的な意見から、『でも、韋駄天様が私刑だなんて……』という、疑惑の声まで。