「え、ええ、まあ……」
緊張のあまり辿々しく返事をした私だったが、竜樹様は言葉を続ける。
「ここまであからさまな冤罪なんだ。デキレースとはいえ、こっちは確実に追い詰められる証拠も抜かりなく準備している。こっちが不利になることは断じてない」
「はっ、はい」
「だから、堂々と前を向こう。俺たちの腐れ茶番劇で、君を蔑んだ連中に吠え面かかせてやろうじゃないか?」
そう言って、不敵にニヤリと笑う。
腐れ茶番劇って……。
竜樹様のその悪い笑み、大人顔負けの悪さだ。ホントに齢13歳の少年かしら。しかも、無駄に美しい。
そんなことを考えると、なんだか可笑しくてプッと吹き出してしまう。あっという間に緊張がほぐれたのは、言うまでもない。
「緊張、剥れたみたいだね」と、竜樹様はうんうんと何度も頷いている。
「さて、舞空。君を貶めたヤツらに、徹底的に……報復(ざまぁ)だ」
「……はい!」
「今のセリフ、聖威が喜びそうだな……」と、竜樹様が苦笑いしたところで、扉のそばにいた衛兵に、中に入るよう指示される。
私たちはお互い見合わせて、頷き。
戦場への扉をーーー開いた。