何故、黒い羽根が……と、ふと視線をずらした、その時。
次に視界に入ってきた光景に、私は息を詰まらせる。
(……ひっ?!)
全身に一気に緊張が走る。恐怖を感じては身がギュッと縮こまった。
それもそのはず。
私を腕に抱いて飛んでいる男の背中には……二つの黒い翼が生えていた。
身の丈以上にある黒い翼は、烏よりも艶やかで、日光に反射してその輝く。それが更に威圧を見せていた。
こ、この人……!
(ま、魔族……?!)
かつて幼い頃の学習で、知識として得た記憶が蘇る。
……黒い翼を持つ、圧倒的な力を持つ高位魔族がいるという話を。
「……ん?どした?」
私の視線に気が付いたのか、私を腕に抱く彼はこっちをチラッと見る。
合わせた瞳の色に、確信を得てしまう。
深く濃い、紫暗の瞳。
……紛れもなく、黒い翼の魔族だ!



