「……それは、兄上の【幻影術式】のせいかもしれない。護衛を対象に自分の幻影を傍に置いて、単独で行動に出たと考えられる」

「【幻影術式】?!特級犯罪人・架威はそんな術式をも駆使するのか?禁呪だろう?!」

「ああ」

特級犯罪人どうこう、というよりは、天部衆の武官という高貴な御身分の韋駄天様に近付くことがそもそも難しい。優れた護衛を抱えているから。

「うーん。護衛ブッ倒しーのからの、から始まるのかぁ。架威様なら、護衛やっつけてる間に逃げそうだ」

「うーん……」



考えに行き詰まって、それぞれが考え込み黙り込む。

結果、再び沈黙が訪れてしまった。



「……」



戦士ではない私は、一緒になって考えても策の想像すら出来ないので、不安を抱えながらみんなの様子を伺うのみ。

そんな中、沈黙を破るように最初に口を開いたのは、竜樹様だった。



「騒ぎ立てられることを嫌う……なら、いっそのこと、騒ぎ立ててやろうか」

「竜樹?」

「これから俺達が為すべきこととは、特級犯罪人・架威の確保。……そして、もうひとつ」