……いや、お怒りの原因は、単純に私達が騒ぎを起こしたというだけではないようで。



「……近くで羅沙が倒れていたんだぞ!幸い怪我はなかったものの!」



……愛しの姫君が、傍に倒れて気を失っていたという状況が許せなかったらしい。

竜樹様は、知らずのうちに姫が戦闘の巻き添えになったのではないかとお怒りなのだ。



いや、竜樹様誤解してる。

それは……!



と、口が開きかけたところで、聖威と目が合い、目で何かを私に訴えているようだった。

まるで「その続きは言うな!」と、言われているようで、私は口を噤んでしまったが。

……え?何故?



そんな私に代わって言い訳を始めたのは、その聖威だ。



「……それは、よく周りも見ないで悪かったよ。身バレしたとはいえ、まさか兄上があそこで仕掛けてくるとは思わなかったし、まさかそこに姫様がいるとも思わなかった」



……どうして?

何故、聖威は本当のことを言わないのだろう。

韋駄天様に成りすました特級犯罪人・架威が、羅沙姫を尾けて拐おうとしたところ、聖威が助けに入ったことを。