追う男、逃げる女。

……さっきの台詞といい、この二人の間に何かある。



そう悟ってしまったのだが、こんな追手が加えられた状況で聞き出すことも出来ず。

聖威に腕を引っ張られたまま、走って逃げることしかできなかった。



すると、そこでバサバサッとした物音が聞こえた。

気付くと、辺りには黒い羽根が舞っている。



「追い付いたのはいいけどよー?超超必死に追いかけてくるあの兄ちゃんどうした??」

「翼!」



いつの間にか、翼が私らの側に並んでいた。

背中には、あの黒い翼が。木々の間を上手く通り抜けて低空飛行をしているよう。



「……翼、来た!行くよ!」

「って、あの兄ちゃん、ひょっとしておまえの……」

「うるさいぃぃっ!」



聖威はまるで自棄糞のように乱暴に空に腕を払う。

すると、目の前に閃光が伴った大きい転移陣がブゥゥンと音を立てて出現した。



「乗れ!」

「っつーか、何でおまえバレてる?認識阻害どうなってんのよ。……僅かなおまえの神力に気付いたんだったら、あの兄ちゃん相当な執念だぞ?」

「……黙れぇぇ!乗れぇぇっ!」