そう言って、少女は私に右手を差し出した。



「えっ……」



この事態に頭が追いつかない私は、急に手を差し伸べられても、どうするべきかわからず戸惑う。

少女の指輪の嵌められた長い指に、ふっくらとした掌をじっと見つめるカタチとなった。



何を……するつもりなんだろう。

私を、ここから逃してくれるの?

それとも……?



だが、戸惑って手を取らない私に業を煮やしたのか、少女は「ああっ!もうっ!」と声を上げた。

苛立ちを見せながら、手枷の付けられた私の手を乱暴に取って引っ張る。

「え、ちょっと!」

「もー!悩んでる暇なんてないの!」

短気!その上強引!

……しかしその時、引っ張り上げられた手が、急にフワッと温かくなった。

異変を感じてその手元を見ると、閃光で描かれた円と術文字が出現していたのである。



(こ、これは……!)



私も見たことがある、その絵。

神術の術陣……移動術式?!しかも、無詠唱?!

ハッとして少女の顔を見る。印も結ばず詠唱無しで術式を発動させるなんて、余程の手練れだ。



この子は、神術士……!