冤罪ではあるが、一応、私は脱走した罪人なのだ。

人目につくのは、まずい。それは聖威も同じだろう。

あたふたしながら辺りを見回していた、その時。



(あ……!)



こっちに気付いて全力で走ってくるその姿を目にして、どれだけ安堵したか。

普段ふざけたことしか言ってない彼でも、縋るモノが何もない時は頼りにしてしまうものだ。



「……舞空!何がどうなって……はぁぁ?!おい!」



全力疾走で登場した翼は、ここへ到着するなり目を丸くして仰天している。

無理もない。いきなり自分らの標的といきなり一戦始まってしまっているのだから。



「た、翼っ!韋駄天様を二人で追いかけてたら、この姫様が拐われそうになって……!」

「マジか!……聖威、おまえなぁぁ!」



私から簡単な事情を聞くとすぐに、聖威の方へと駆け出す。

走りながらも、翼は右手を翳す。

「いきなりバトってんじゃねえよ、コンチキショー!…… Beyond the sky,Fly high……」

翼が、聞きなれない異国の言葉を詠唱する。

すると、どこからか小さな黒い羽根が大量に出現し、バサバサと音を立てて、翼の翳す右手を覆い尽くしていた。



「so’fly……神魔剣、【夢翼(つばさ)】」