でも、最後の最後まで何かに縋りたいと思うのは、何故か。
(誰か……)
ーーーねえ、誰か教えて?
言葉のひとつも出なかった、この私に。
何が……悪かったの?私。
だが、老師が傍にいない今、答えが返ってくる……はずもなく。
その時。幌馬車がガクンと大きく縦に揺れる。乗客の自分の体も共に揺れて、座面から転がり落ちそうになるほど。
(な、何……?)
幌馬車の車輪の音が響いて、急停止する。また車体がガクンと揺れた。
私の隣に座っていた監視役の兵士も、ハッとして辺りを見回している。
「な、何だ?今のは!」
まるで、真上から何か圧力がかかったかのような、そんな衝撃だった。
だが、異変はすぐそこに。
何があったのか確認しようと辺りを見回し、ふと振り向くと。
幌馬車の中には、先程までは確かにいなかったはずの人影が……いつの間にか、いたのである。
黒ずくめのローブで身を覆い、フードで顔を隠している。
男か女かわからないが、比較的小柄だ。
立っている場所からして、幌馬車の後部から入ってきたのか。何の気配もなく、気付くとそこに立っていた人影に、私を含め隣の監視役の兵士も驚愕の声をあげていた。



