そして、互いの刃を合わせて、ジリジリと押し合っている。まさに力比べの状況だった。

その光景を誰もが固唾を飲んで見守っている。



「……すげえ剣気だな。どっち?女の子?」

「そのようだにゃ。はぁぁ、珍し」

「剣気?」

「剣士の気、刃に集中かけることによって、体から滲み出るオーラみたいなものかな。殺気と似てる。ビリビリと風感じない?」

「あ、なるほど」

「……しかし、10歳の小さなお嬢ちゃんがあれ程の剣気を。末恐ろしいぞ」



その剣気とやらを放って大剣を握る女の子は、少しクセのあるふんわりとした、金髪の筋が所々にある黒髪を右耳の上に束ねている。軽装備の肩鎧と胸当ては漆黒で紋章入り。

黒髪の令嬢?……どこの誰?



一方、試合場の二人は、力比べともいえる刃の押し合いを続行している。

ジリジリとした緊迫感溢れる状況の中、苦悶の表情を浮かべているのは、宮毘羅様の御令息の方だった。……え、御令息の方が押されているの?!

「くっ……『不義の子』が!」

「……」

捨て台詞を吐かれた御令嬢だが、動揺で表情を崩すことはない。むしろ涼しげだ。



「『不義の子』?……あ、あぁっ。ひょっとして、夜叉王様の御令嬢?!」

「へー。あのお嬢ちゃんも、有名神族の令嬢か?」