老師の指導がいいからか、ちょっと教えてもらっただけで初めて術式を完成させることが出来て無邪気に笑っていた、あの頃のことを。
(……ねえ、老師)
既に私の前から姿を消して、もうそこにはいないのに。
ーーー今の私、どう?
追想を辿って、なお問いかける。
あの時のように。
(……ううん、全然ダメ)
纏わりつく感情を吹っ切るように、首を横に振った。
動物一匹いない辺境の山奥。揺れの酷い幌馬車。手枷を付けられ、監獄へ送られる自分。
全然ダメダメじゃないの。
……これが、現実だ。
冤罪なのに、こんな仕打ちを受ける自分。ほとほと呆れる。
あの頃は……老師が傍にいたあの頃は確かに目の前が輝いて見えていたのに。
今の私の目の前には、真っ黒な暗闇しか見えない。
そう思うと、ますます項垂れてしまった。
どうしてこんなことになったのか……自分にもわからない。
何を間違えたのか、自分の何がいけなかったのか。
……いや、今更考えたところで、もう遅い。牢獄に入れられてからも散々考えてきたけど答えが見つからなかったのだから。
誰が教えてくれるわけでもなく。



