いつまでもダラダラと会話をしている翼と銀太さんを聖威が後ろから小突く。

……何で一緒にふざけ合わないんだろ?

なんて、違和感は置いといて、開会の儀が始まろうとしていた。





そして……私たち、観客席の前にとうとう姿を現したのだ。

まさに武官ともいえる、鍛え抜かれた筋肉質の大柄な姿の標的が。



(韋駄天様っ……!)



開会の宣言と共に、私たちだけでなく、観客席が徐々に静かになっていく。

司会進行の武官に紹介されて、一歩前に出た。

その様子のひとつひとつを、息を呑んで見守る。

表情、仕草、声。

それらを注視していくに連れ、緊張で身体中の筋肉が強張っていくような気がした。

「………」



私だけではない。

他の三人も、いつの間にか真剣な面持ちで韋駄天様のお姿を凝視している。

参加者の少年少女に向けた辞を述べている、その姿を。

ーーーそこにいる韋駄天様は、本物なのか、偽物なのか?

群衆に紛れてはいるもの、私たちの間にだけ、緊張で張り詰められた異様な空気が漂っていた。



そして、韋駄天様の辞も開会の儀も終了し、辺りは動き始める。

これから、未来の戦士たちの試合が始まるのだ。



「……どうだ?」