……そういえば昨年、朝霧様の従兄弟が参加されるというので、応援のために朝霧様と二人でこの会場に足を運んだっけ。
そんな淡く、今となっては苦い味となった思い出を頭に過らせた。
まさか翌年、自分を陥れた元凶の者を探しにこっそり訪れているとは思うまい。
ぐるっと見渡すと、観客席は着々と人が埋まり始めている。
これから開会の儀が始まるのだ。来賓として招かれた神族の紹介や、祝辞、開会宣言などが行われる。……これが終われば、席から離れ、試合場の傍に行ってもいいのだけど。
するとその時、会場内が騒めき始めた。
皆が注目とするのは、その来賓席。
そこには、騎士団の要職の方々をはじめ、続々と名だたる高位神族の方々が集まっていた。この神々しい御方たちを見に来た平民も少なくないだろう。
そこで、女性の黄色い歓声が沸き上がる。キャアキャアと羨望が混じった高い声だ。
……竜樹様だ。
昨日、ウチでハンバーグを食べていた、竜樹様。
現したその姿は、昨晩の簡素な旅の身なりとは違って、竜族の象徴の色である濃紺の膝丈の上着を纏う、正装姿の竜樹様だった。



