ニコリと微笑みエレベーター前でクライアントさんたちを待つ。ほどなくしてクライアントさんたちがエレベーターでやってきた。会議室へクライアントさんたちをお通しし、沸かしていた湯を少し冷ますとお茶を入れる。持ってきたクッキーも添えておこう。

 沙菜はお茶をもって会議室へと急いだ。

 クライアントさんたちの前に入れたお茶とクッキーを置いていく。

 目の前に置かれた手作り感のあるクッキーに興味津々のクライアントさん。

「これはクッキーかね?」

「あっ、はい。私が焼いたものなんですけど良かったらどうぞ」

 沙菜はお盆を胸に抱きしめながら恥ずかしそうにクッキーを薦めた。沙菜の様子を好ましく思いつつ、男性がクッキーを頬張る。

「うまい」

 その言葉に沙菜は胸をなでおろし、ニコリと微笑んだ。すると会議室はほのぼのとした空気へと変化していく。

 そこへ蒼士達がやって来た。沙菜はペコリと頭を下げると会議室から出ていった。

 その沙菜をジッと見つめる一人の男性の姿があった。


 沙菜が会議室から戻ると先ほどと変わらず戦場のようだった。会議は始まったのにどうしてこんなことになっているのかしら?

 沙菜は近くにいた社員に声をかけた。

「あの……、何かあったんですか?」

「それが、本社の方から先週提出した見積もりと、領収書の計算が合わないって言われたんですが何が何だか……部長は会議中だし」

 そう話をしている間も電話は鳴りっぱなし、誰も電話に出る気配がない。基本電話は三コール以内にとるのが基本だ。鳴りっぱなしのコール音に、体のうずうずが止まらない。

 どうしたらいい?