頷いた私の涙を大きく熱い手で拭い、鉄平は私に口づけた。

私は想いがこみ上げて鉄平に抱き着く。

迷わずに抱きしめてくれるそのぬくもりに、ほかには何もいらない。
ここだけでいい。
鉄平がいてくれればそれでいい。

何度もそう思った。

「愛してる。咲。」
幼いころの名前で呼ぶ鉄王。
「私、あなたのことなんて呼んでました?」
そんな質問に「今日はお惚け妃か?」と笑いながら鉄王は答える。

「”鉄”だ。幼いころの私の愛称で私を呼ぶのは咲、そなただけだ。そして、そなたの幼いころの愛称を呼ぶのは私だけだ。この世界で、私だけ。」
今、私がいる世界が、私の知っている生まれた世界ではなくても、ただ一つ確かなこと。
それは、私たちは愛し合っていて、この関係は変わらないこと。

そして、鉄平が・・・生きていること。

だってこんなにもあたたかい。