「咲・・・・」
優しい声に私は目を開ける。
自分が泣いていたことが分かる。

その涙を鉄王が拭ってくれていることも・・・

「富さんは・・・?」
かすかに出た声で聞くと、鉄王は辛そうに眉間にしわを寄せながら首を横に振った。

「夢じゃなかった・・・ごほっ・・・こほっ・・・」
つぶやいただけで咳が止まらなくなる。
「少し水を飲むと良い。」
私の体を起こして、水を飲ませてくれる鉄王。

「守り切れずすまない・・・」
苦しそうな表情の鉄王。
私だけじゃない。誰かが血を流すのをもう見たくないと願っていたのは鉄王だって同じだ。